通信速度が遅いLANの改善事例

「3Dプリンターのデータ通信速度が遅いので改善したい」とのご相談

通信速度が遅いLANの改善事例

クライアントのお客様からお電話があり、「社内のLANが劣化しているのか、データ通信速度が遅いので、一度見に来てもらいたい。」とのご相談をいただきました。

そのお客様は木型製作をされている企業様です。いろいろな部品の元となる木型の製造を専門としています。時代の流れで、次第に木型がプラスチック製に置き換わり、木型が利用される機会が減ってきたので、3Dプリンターを導入されていました。

ところが、3Dプリンターを動作させるために出力データを転送すると、データの転送が完了するまでに何時間もかかってしまう場合があるそうです。LANでデータを転送しているのに、そこまで時間がかかるので、お客様は「LANの劣化」を疑ったわけです。

お客様の工場に伺い、確認しました。3Dプリンターや木型を削り出すNCルーターなどの工作機械は、工場に設置されていました。そこから40mほど離れた場所に設計事務所の建物があり、工場との通信はLANケーブルを架線して行われていました。設計事務所から工作機械にデータを送信し、工作機械が動作するようになっていました。

データの送信で何時間もかかるようであれば、3Dプリンターの稼働率が悪くなり、生産性が落ちてしまいます。かといって、出来上がったデータをわざわざ工場まで持って行って稼働させるのも非効率です。

既存のLANを調査

LANケーブルの種類を調べると、カテゴリ5(CAT5)という規格のケーブルが使用されていました。このLANケーブルは、1Gbpsで通信できる規格のもので、通信速度は速いはずです。

ところが、CAT 5のLANケーブルは、ノイズに弱いケーブルです。LANケーブルにノイズが乗ってしまうと、その影響でデータが壊れてしまうので、3Dプリンターが正常なデータをすべて受け取るまでに時間がかかっていたようです。

設計事務所と工場が40mも離れていることで、距離が長いのでノイズが乗りやすい状況です。さらには、工場では工作機械の動作によってノイズが発生するために、そのノイズも拾ってしまっていたのだと思います。

また、LANケーブルを敷設してからかなりの年数が経過していたので、ケーブルの劣化も通信速度が遅くなる原因になります。

解決策はカテゴー6AのLANケーブルに交換すること

これらの条件から、LANの通信速度改善の解決策を検討しました。

リンクアグリゲーションか?高性能なLANケーブルで引き直すか?

リンクアグリゲーションとは、複数のLANケーブルを接続して、それを仮想的に1本のLANケーブルと見なして使用する方法です。LANケーブルの多さに応じて転送速度が早くなります。

しかし、今回のクライアント企業様の事例では、ノイズが原因だと思われます。リンクアグリゲーションを利用しても、ノイズが乗ることには変わりがないので、根本的な解決にはなっていません。

そこで、高性能なLANケーブルに引き直し、スイッチングハブを新調することを選びました。

LANケーブルの種類

先ほど、LANケーブルにはさまざまな種類の規格があることをご紹介しました。クライアント企業様では、CAT5を使用されていましたが、次に示すように、他にもたくさんの種類があります。

  • CAT5(100Mbps)
  • CAT5e(1Gbps)
  • CAT6(1Gbps)
  • CAT6A(10Gbps)
  • CAT7(10Gbps)
  • CAT8(40Gbps)

ここで括弧内の数値は、それぞれの種類における理論上の回線速度です。種類によって、回線速度が異なり、最新のカテゴリーの方が、技術が進歩して回線速度が早い傾向にあります。しかし、回線速度だけでカテゴリーを選んではいけない理由もあります。次にそのことをご説明いたします。

CAT8やCAT7を採用しなかった理由

カテゴリの数値が大きいものが最新のLANケーブルの規格になり、通信速度が早くなります。今現在の最新のものではCAT8で、理論上の通信速度は40Gbpsと高速です。クライアント企業様でも、CAT8を導入したら良いのですが、最新のものであっても、メリットだけでなくデメリットもあります。

CAT8のデメリットは、伝送距離は最大30mとされており、それ以上になると著しく通信速度が遅くなる可能性があります。クライアント企業様では、設計事務所と工場の距離が40mもあり、もちろん設計事務所内や工場内の配線をも考慮すると、60mほどになる可能性があったので、CAT8は却下になります。

また、CAT7は既存のLANケーブルとはコネクタの形状が異なるので、スイッチングハブのみならず、パソコンや3DプリンターがCAT7のコネクタに対応していなければいけません。そのため、CAT7も却下です。

そして選ばれたものが、CAT6Aです。

カテゴリ6Aの特徴

CAT6Aの特徴は、LANケーブルがシールドされていることです。その構造により、伝送距離は最大100mなので、設計事務所と工場の工作機械までの距離にも耐えられます。

理論上の通信速度がCAT5の10倍になります。実際には、設置してみなければ通信速度がどのくらい出るのかわかりませんが、倍以上の速度が出ることが期待されます。

また、LANケーブルのコネクタが、CAT5と同じ形状です。そのため、パソコンや3DプリンターのコネクタにもCAT6Aのケーブルを差し込むことができます。

LAN敷設工事の内容と結果

LANをCAT6Aに刷新するためには、CAT6AのLANケーブルを配線したら終わりではありません。LAN刷新工事では、次のことを行いました。

  • 設計事務所と工場のCAT5のLANケーブルを撤去し、CAT6AのLANケーブルを配線
  • 両方のスイッチングハブをCAT6A対応の10Gbpsのものに刷新
  • ワークステーションには10GbpsのLANカードを設置

LANケーブルをCAT6Aに変更しても、スイッチングハブやワークステーションのLANカードが旧型のものであれば、CAT6Aの通信速度が出ません。LANの通信速度の改善には、LANケーブルだけでなく、機器をも含めた全体のバランスを考える必要があります。

2日に渡るLAN敷設工事が完了し、すべてのコンピュータにてインターネットの利用が可能かを点検しました。

工事の結果、何時間もかかっていた3Dプリンターのデータ転送が、半分以下の時間でできるようになりました。つまり、今までよりも倍以上の通信速度が出るようになりました。

今回のLAN刷新工事のポイント

今回のLAN刷新工事のポイントをまとめると、次のようになります。

  • LANの速度アップは、LANケーブルだけでなく、スイッチングハブなどの機器を含め、全体的なバランスで決まります。通過地点に遅いハブ等があると全体的なパフォーマンスが落ちます。PCの出力からデータの経路を見直すことが肝心です。
  • LANケーブルは寿命があります。使用環境によりますが紫外線や温度変化の大きい環境では5年~10年ほどで交換した方がよいです。
  • LANケーブルの長さによりますが、長い距離を引いた場合、ノイズや信号劣化があるので1ランク上のケーブルをお勧めします。

LANの通信速度が遅くなってお困りの方、LANの通信速度を上げたい方は、当社までお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

パソコンやシステムに詳しくなくても大丈夫です!
ソリマチ製品、業務改善のご相談などお気軽にお問い合わせください。
内容を確認後、担当からご連絡を差し上げます。

お急ぎの方は、お電話でも受付けております。
オピフィクス (052-760-6550) 
営業時間|9:00-18:00(土日祝休み)

お問い合わせフォーム


    ■確認画面は表示されません。上記内容にて送信しますがよろしいですか? (必須)